第二話『ゼロのルイズ』

 俺が眼を覚ましたのは、我が家の自室のフカフカベッドでは無く、石畳の消毒液臭が香る硬いベッドの上だった。壁にはテレビで見た、どこかのお城みたいなランプがあって、その中で揺らめく火が部屋を照らしている。
 結構広い部屋。十台のベッドが横に並べられていて、直ぐ隣にある小机には見た事のない無い不思議な光を放つ花が飾られている。
 試しに頬を抓ってみた。

「痛っ……」

 やっぱり夢じゃなかった。思わず溜息が出る。わけの分からない怪物達。左手から溢れ出した光。その中に居たナニカ。分からない事だらけだ。
 俺はとりあえず起きる事にした。俺が寝ていたのは部屋の一番奥のベッドで、直ぐ近くに窓がある。外は真っ暗。どうやら夜になってしまったらしい。窓は外開きで開けられる様になっている。
 部屋には誰も居ない。俺は窓を開いた。そして、愕然とした。空には有り得ないモノが浮かんでいた。月だ。それも、二つある。幾ら何でも、寝て起きたら月が増えてた……、何て事は無いだろう。
 俺はよろけながらベッドに座り込んだ。俺はとんでもない勘違いをしていたらしい。鏡に吸い込まれるなんてファンタジーを体験して、どこかに飛ばされてしまったらしいとは心のどこかで思っていた。だけど、月が二つある場所なんて、地球に存在する筈が無い。つまり、ここは地球じゃないって事だ。
 多分、どこか別の星なんだ。前に、宇宙には地球以外にも人の住める星がある可能性が在るって話を友達から聞いた事がある。

『貴方はそう遠く無い未来に運命の別れ道に遭遇する事になるようだ』

『運命の日に貴方は選択を迫られる』

 ああ、あの青い光に包まれた部屋での出来事は夢などではなく、現実だったんだ。そして、イゴールの言葉を漸く本当の意味で理解出来た気がする。
 俺は選択してしまったんだ。深く考えもせず。自転車なんか放っておけば良かったんだ。運命の別れ道はあの鏡だった。鏡に体が触れた瞬間、俺はこの星に来る選択をしてしまった。
 どうして、イゴールはこの事を教えてくれなかったんだろう。運命の選択っていうのがこんな別の星に飛ばされてしまう事だなんて、誰が想像出来る? 少なくとも、イゴールには分かっていた筈だ。選択しろって言うなら、その選択肢がどういうモノかくらい、教えてくれたって良かったじゃないか。
 悪態を吐きながら俺は頭を抱えた。陸が続いているなら歩けばいい。海があるなら密航でもなんでもすればいい。だけど、宇宙は無理だ。帰れない。そう考えてしまうと、心が押し潰されそうになった。
 俺はどうしたらいいんだろう。

「ちくしょう!」

 俺は癇癪を起した。近くの小机に乗っていた花瓶を力の限り叩き落した。けれど、そんな事をしても何にもならなかった。
 帰りたい。その衝動を抑えられる程、俺は大人じゃなかったらしい。気付いたら、俺は泣いていた。家に帰りたい。母さんのハンバーグが食べたい。インターネットがしたい。泣き叫んでも、誰も俺を救ってくれはしなかった。
 いつの間にか、俺は眠っていた。眼を覚ますと、そこには俺の手を見ながら変な色の紙に何かを書いている髪の薄い年配の男が居た。

「アンタ、誰だ?」

 思わず乱暴な口調で聞いてしまった。
 眼を覚まして、いきなり自分の手を見つめているおっさんが居たら、誰だって気色が悪い。
 男は俺の年上に対して無礼であろう態度を気にする事無く、すまない、と謝ってきた。

「君の左手の甲に刻まれたルーンがあまりにも珍しいモノだったのでね。勝手ながら、紙に写させてもらっていたんだよ。私の名はコルベールだ。ジャン・コルベール。炎蛇の二つ名を持っている。この学園の教師だ」
「コルベール……、さん。学園って、ここは学校なのか?」

 驚いた事に、ここは学校らしい。コルベールはどう見ても地球の人間と同じだし、学校なんてモノがあるなんて、まさに地球ソックリだ。

「そう言えば、どうして、俺はアン……コルベールさんの言葉が分かるんだろう?」
「ん? ソレは君が言葉を話せるからじゃないのかい?」

 コルベールは俺の言っている意味が理解出来なかったらしい。

「そうじゃなくて、俺はこの星の人間じゃないのに、どうしてこの星の言語が理解出来るのかなって」

 俺が言うと、突然、コルベールの眼差しを強くなった。

「どういう事だい? この星の人間では無い……というのは」

 俺は自分の迂闊さに頭を抱えた。誰だって、自分は異星人です、なんて言う奴は頭がおかしい奴か、変な宗教に被れた馬鹿だと思うに決まってる。
 コルベールは哀れみの篭った目で俺を見ている。

「えっとですね。俺、昨日の夜に一回起きたんです。そん時に、月が二つあって気が付いたんです。俺が居た場所には月は一個しかなかったから」
「んん? 月が一つしかない? それに、星というのは勿論、夜空に浮かぶ、あの星の事だよね?」

 俺の言っている事が巧く理解出来ないらしい。俺はどう説明すればいいのか悩んだ。まさか、異星人に自分が異星人である事を説明する日が来るなんて思っても居なかった。

「えっと、コルベールさんは今立っている場所も、星の一つだって事は知ってますよね?」
「そのくらいは知っているよ。私が言いたいのは、空の向こうに広がる星の海の中にこの星の様に人間の住める場所があるのか? という事だよ」
「あ、ごめんなさい」

 慌てて謝った。コルベールは困った顔をしていたが、怒っていないようだが、幾ら何でも失礼だった。
 コルベールは苦笑しながら許してくれたが、どうにも居心地が悪かった。

「俺の住んでた地球にも人間や動物が住んでましたよ。俺がその証拠」
「なるほど、興味深い。星の海については、我々は未だによく分からなくてね。これは偉大な発見だよ」
「アッサリ信じるんですね」

 俺は自分で言ってて、こんな話を信じて貰えるとは思っていなかった。なのに、コルベールは全く疑う事無く、俺の話を受け入れた。その事に、俺は疑問を感じた。

「いや、君の話を完全に信じた訳では無いよ。だが、君の着ている服や、君の持ち物の材質はどれも見た事の無い物ばかりだった。君の話が完全に嘘であると、言い切る事は出来ないと判断したのだよ」

 思わず目を丸くした。こんな人、本当に居るんだなって、思わず感心してしまった。

「それに、君の顔立ちはかなり珍しいのでね。いや、変という意味ではないよ? それに、君はメイジである私に対して、恐縮したり、恐怖したり、憤怒したりという事をしなかった。普通、平民が見ず知らずのメイジと一対一になると、どうしてもそういう感情が面に出てしまうものだけど、君は実に堂々としている。勇猛だから、という訳でも無さそうだ。恐らく、文化の違いだろう。君の星ではメイジと平民が共存しているのではないかい?」
「そのメイジってのは何ですか? 俺の星の言葉だと、魔法使いって感じの意味だったと思うんですけど」
「魔法使い……。魔法を使う者という意味なら、それが正しい。私は魔法使いだ」
「魔法使い……って、本当に!? 空飛んだり、呪文を唱えて魔法使ったり出来るの!?」
「うん、そのくらいなら大抵のメイジは出来るよ。空を飛ぶ魔法、フライは基本だからね。それにしても、その驚き方は……、君の星には魔法使いは居ないのかい?」
「居ないですよ。御伽噺の世界だけです」
「御伽噺の存在か……。つまり、君の星では平民のみの社会が形成されているのかね」
「その平民ってのが良く分からないッスけど、魔法を使えない者って意味なら、そうッスよ」
「ますます興味深い。魔法が存在せず、平民だけで形成される社会か――。魔法が無い社会とはどういうモノだい? 空を飛ぶ事も、魔法で家を作る事も出来ないなど、あまり想像し難いのだが」
「魔法なんて使わなくても、色々と便利な物があるんですよ。例えば……って、そう言えば、俺の荷物――」
「ああ、君の荷物なら私が預かっているよ。本当なら、ミス・ヴァリエールに預けるべきなのだろうが、昨日は彼女も混乱していてね。覚えているかい? 君が意識を失う前、突然、ルーンが凄まじい光を放ったのを」
「覚えてます。何か、光の中にナニカが居て、声が聞こえた気がしたんスけど、アレってなんなんですか?」

 俺は昨日の事を思い出して尋ねた。左手を見てみると、甲に変な傷跡が出来ていた。文字のようにも見えるけど、ミミズがのたくった様な変なモノだった。
 コルベールは考える様に顎に手をやって唸った。

「光の中にナニカが居た……? 召喚のルーン? そんなモノがあるのか? すまないが、これに関しては調べてみない事には分からない。元々、君に刻まれたルーンは珍しいモノでね。後で調べようと思っていたんだ」
「ルーン……。ってか、これって何なんですか? それに、昨日の子は?」

 俺が矢継ぎ早に質問すると、コルベールは落ち着けと手で制した。
 俺が黙ると、コルベールは言った。

「それは、昨日、君にキスをした桃色の髪の少女、名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールというのだが、彼女と君との絆と思ってくれればいい」
「絆? でも、俺はあの子とは初対面ですけど?」
「君が通ったと言う鏡。それは、春の使い魔召喚の儀式の召喚魔法だよ。本来は、幻獣や動物の前に開き、召喚に応えた場合に契約を果たすというのが、使い魔召喚の儀式なのだが、彼女の召喚魔法はどうやら君の前に開いてしまったらしい。そして、君は鏡を通る事で、召喚に応じてしまったんだ」

 そういう事だったのか。月が二つの星に魔法使い。信じられない事が次々に起こったが、漸く俺は自分の身に何が起きたのかを理解出来た。
 イゴールの言っていた運命の別れ道っていうのは、間違い無く召喚魔法として開いた鏡を通るか否かの選択。そして、待っている人っていうのは、使い魔、つまりは俺を召喚したルイズっていう名前の昨日の可愛い女の子だった訳だ。見事に、イゴールの言った通りになってしまった。

「俺は、帰れますか?」

 既に、応えは分かっていた。そもそも、他の星に人が住んでいるかどうかも知らないのに、俺を帰す方法なんて、あるとは思えなかった。
 案の定、コルベールは済まなそうな表情を浮かべた。

「サモン・サーヴァントは一方通行なんだ。送還の魔法は存在しない。済まない……。そもそも、人が召喚されるなんて事は前例が無いものでね」

 俺は俯いてしまった。帰れない。そう、宣告されてしまったのだから。誰に怒りをぶつければいいのかも分からない。確かに、よりにもよって俺の目の前に召喚魔法の鏡を出したのはルイズという少女だけど、わざとじゃないし、通ったのは俺の選択だ。イゴールだって、選択肢がどういうモノかを教えてくれなかったが、そもそも選択がある事自体、説明する義理なんて無いのだ。そもそも、イゴールか何者なのかも分からないし、怒っても仕方ない。
 ある意味自業自得だった。それでも、帰れないという事実が、背中に重く圧し掛かってきた。

「君の荷物は私の研究室に置いてある。だけど、その前に君はミス・ヴァリエールに会わなくてはいけない。さっき言い掛けたけど、彼女は昨日、君の身に起きた事にショックを受けてしまってね、部屋で安静にしている筈なんだ」
「俺はそのルイズって子の使い魔にならないといけないんですか?」

 コルベールは頷いた。

「君を送還出来ない以上、彼女の使い魔となるしか道は無いんだ。この星では、貴族と平民には大きな格差がある。もしも、君がミス・ヴァリエールの使い魔とならなかったら、平民である君を学園に置いて置く事が出来なくなってしまう。それに、平民が一人で地盤も無く生きていける程、治安も良くないんだ」
「でも、その子はいいんですか? 使い魔って、動物とかの方がいいんでしょ? 昨日、あの子周りから馬鹿にされてた気がするし」
「君を召喚した時点で、彼女の使い魔は君以外には居ないんだよ。それが決まりだし、既に契約を済ませてしまっている。その左手の甲に刻まれたルーン。それが、メイジと使い魔を繋ぐ絆なんだ」

 俺は改めて左手の甲を見た。その瞬間、昨日のルイズとのキスを思い出してしまった。顔を真っ赤にする俺を、コルベールは微笑ましげに見てきた。

「そう言えば……、平民と貴族には格差があるって言う割りに、コルベールさんは俺に優しいッスね」

 俺が言うと、コルベールは苦笑した。

「私は、そういうものに疎いだけだよ。それに、君自身に興味があるというのも理由の一つだ。君の持ち物はどれも、研究者としては興味をそそられるモノばかりだ。それに、君と話して、君の人と成りも見る事が出来た。人を使い魔にするというのは前例が無いが、もしも君が悪人なら、ミス・ヴァリエールに近づける訳にはいかなかった」
「過去形って事は、合格って事ッスか?」
「ああ、ミス・ヴァリエールをよろしく頼むよ。彼女はちょっとコンプレックスを抱えていてね。気性が激しい所があるんだが、同時に弱い部分もある。使い魔として、彼女を護って欲しい」

 コルベールの真摯な眼差しに、俺は頷くしかなかった。他に道も無い。

「……わかりました。で、使い魔ってのは何をすればいいんスか?」
「その件はミス・ヴァリエールの部屋に行ってからにしよう。道すがら、この星について掻い摘んで話すよ」

 俺はコルベールに連れられて医務室を出た。歩きながら、俺が今居る国の名前や、大国と呼ばれる国の名前、そして、始祖として崇められているブリミルという神様が居るという話を聞いた。
 途中で学生と何度かすれ違ったが、俺の顔を見ると首を傾げた。コルベールの言うとおり、俺の容姿や服装は余程珍しいんだろう。初めて外国人にあった日本人も同じ反応をしたのかもしれない。
 ルイズが居るのは女子寮らしい。入る時、女の子達の視線がきつかった。階段を上がると、コルベールが立ち止まった。

「ここだよ」

 コルベールは部屋の扉を数回ノックした。中から鈴を転がす様な愛らしい響きの声が聞こえた。扉が開くと、そこにはスケスケのネグリジェを着た昨日の美少女がボサボサの髪で現れた。
 あまりの事に凍りつくと、コルベールが俺を持ち上げて百八十度回転させた。
 コルベールがコホンと咳払いをすると、ルイズも何が起きているのか理解したらしく、慌てて部屋の中に入って行った。
 再び中から声が聞こえた時、部屋の中から昨日着ていたのと同じ制服の様な服を着たルイズが現れた。

ゼロのペルソナ使い 第二話『ゼロのルイズ』

「さっきは失礼したね。声を掛けるべきだった。君の使い魔を連れて来たよ。ミス・ヴァリエール」

 コルベールが言うと、ルイズが僅かに顔を火照らせながら睨む様に俺を見て来た。さすがにネグリジェ姿を見てしまった罪悪感で、その視線に何も返せなかった。

「使い魔……。ソレですか?」

 ジトッとした眼で睨みつけられる。確かに裸よりエロイ姿を見てしまった事は悪かったと思うが、俺のせいじゃないし、ソレ扱いは酷くないか? そう思ったが、やっぱり何も言えなかった。何せ、彼女のネグリジェ姿を脳裏にしっかりと焼き付けてしまったからだ。これだけでご飯三杯はいける気がする。

「ミス・ヴァリエール。彼について、色々と話さなければならないんだ。入れて貰ってもよろしいかな?」

 ルイズが渋々といった感じに俺とコルベールを部屋に招き入れた。ルイズの部屋は綺麗に整理されていて、所々に女の子らしさが垣間見えた。
 考えてみれば、女の子の部屋に入るなんて生まれて初めてだ。思わず緊張してしまった。

「ミスタ、やっぱりソレを使い魔にしないといけないんですか?」

 まだ言うか……。案外、顔に似合わずしつこい性格らしい。いや、それ程ネグリジェ姿を見られたのが恥しかったのか。更に罪悪感を感じた。

「ミス・ヴァリエール、彼の名前はサイト君だ。ソレなどと呼んではいけないよ」
「でも!」
「彼はこれから君の使い魔になるんだ。彼も了承してくれた。仲良くしなければいけないよ?」

 コルベールに言われて、ルイズは渋々と頷いた。それにしても、改めて見てもルイズはとんでもない美少女だ。こんな子にキスされたんだな。思わず顔が火照った。

「さて、まずは彼の素性について話さなければいけないね――――」

 コルベールがルイズに俺の事を話す傍らで、俺はルイズを見つめ続けた。その端整な顔立ちは、映画に出て来る外人の女優と比べても全く負けていない。
 気がつくと、コルベールがルイズに話し終えたらしい。ルイズが俺を見ている。

「他の星から来たって本当?」

 全く信じていないって眼をしている。ま、当然だろうな。いきなり信じてくれた、コルベールの器がでか過ぎるんだ。
 俺は頷いた。信じ難い話だとは思うけど、真実なのだから、信じてもらうしかない。

「でも、ちゃんと言葉が通じてるじゃない。他の星から来たっていうなら、それっておかしくない?」

 それは俺も疑問に思ってた事だ。俺が喋ってるのは日本語で、ルイズやコルベールも日本語を喋ってる。まさか、日本語がこの星の共通言語……なんて、都合のいい話は無いだろう。

「これは仮説なのだが――」

 コルベールが口を開いた。

「これはサモン・サーヴァントの影響かもしれない」
「召喚魔法のですか?」

 コルベールの言葉に、ルイズは興味深そうに尋ねた。

「そうだ。ミス・ヴァリエール、サモン・サーヴァントは使い魔となる存在と、使い魔の主となるメイジの間にゲートを開くモノ。それだけだと思うかね?」
「え? 違うんですか?」

 まるで、授業中に先生に当てられて答えに窮している生徒の様に、ルイズは困った顔をした。その様子を見て、俺はコルベールが先生で、ルイズが生徒なのだと実感した。

「これは、私の仮説に過ぎないのだが、使い魔となる存在は、サモン・サーヴァントのゲートを通る際に、ある程度の知識を得るのでは無いかと思うんだ。例えば、人語を理解出来る様になるとかね。メイジは使い魔とコミュニケーションが取れる。だけど、それには使い魔が人語を解しているという前提条件が必要なんだよ。普通はメイジの言いたい事が使い魔にも大体の事が理解出来る程度のモノだと思う。けれど、彼は人間だ。元々、言語という情報伝達の手段を持っている。我々の言語の意味を、彼は彼の言語に変換して理解している筈だ。逆に、彼が伝えたい言語は彼の中で勝手に我々の言語に変換されているのかもしれない」

 コルベールの言っている意味は何となく分かった気がする。あの鏡を通った時に、俺はルイズやコルベール達の言葉が理解出来る様になったらしい。俺が日本語だと思って聞いていた二人の言葉はこの星の言語で、俺の頭が勝手に日本語に翻訳しているって事。んで、俺の言葉がルイズやコルベールに理解出来るのは、俺の言葉が勝手に頭でこの星の言語に変換されてるかららしい。
 魔法っていうのはとんでもないモノだな。俺は思った。ルイズも理解したらしく、目を丸くしている。

「まあ、あくまでも仮説だ。もしかしたら、もっと単純にサイト君の言語と我々の言語は偶然に一致しているのかもしれないしね。ミス・ヴァリエール、彼が他の星から来たという事を今無理に信じる必要は無い。絆が深まれば、自然と分かり合える様になるだろう。それよりも、まずはサイト君に使い魔の仕事について説明したいのだが、いいかね?」
「あ、はい! 大丈夫です」
「お願いします」

 コルベールの言葉に、ルイズと俺は頷いた。使い魔の仕事っていうのは、大きく分けて三つあるらしい。一つは主人の目となり耳となる事。これは駄目だった。ルイズが言うには、俺の見ているモノも聞いている音も聞こえないらしい。安心した。俺の見ているモノや聞いている音を他人に知られるなんて、これ以上のプライバシーの侵害はそうそう無いだろう。
 二つ目は、武器や薬なんかの素材を集める事。これも無理だ。この世界の鉱物や植物の知識なんて、俺には無い。まあ、勉強してみるのも悪くないかもしれないけど、ルイズは魔法薬の授業程度にしか素材は必要無いらしい。そういう時はお店に注文するらしい。お店に取りに行かせる事はあるかもしれないから、地理を勉強しておけと言われた。つまり、お使いだな。
 三つ目は、主人の身を護る事らしい。

「でも、あんたじゃ無理ね……」

 断言された……。けど、喧嘩も殆どした事無いし、魔法なんて、とんでも技使う人間を相手になんて出来ない。

「……人間だもん」
「全く、お使い程度にしか使えないなんて……」

 ルイズはガックリと肩を落としている。そんな事言われても困る。

「せめて、使用人程度には使えてよね? 洗濯や掃除、その他の雑用。こっちは、あんたの世話をするんだから、キッチリ仕事をしなさいよね?」
「掃除はともかく、洗濯なんてやった事ないぞ?」

 洗濯機の使い方すら知らない。

「……そのくらい、勉強しなさい!」

 怒られた。勉強する事が多くて大変だ。

「後で、使用人の誰かに洗濯や掃除の仕方を教えて貰える様に手配をしておこう。私はこれから授業の準備があるのでね、君の荷物に関しては今日中に取りに来てくれ。私は夕方には研究室に戻っているからね」

 そう言って、コルベールは俺達に仲良くする様に言うと、ルイズの部屋から出て行ってしまった。
 後に残された俺とルイズはお互いに黙りこくっていた。今迄、コルベールが居たおかげで緊張せずに居られたけど、こんな美少女と密室で二人っきりなんて生まれて初めての経験だ。何を話せばいいのか分からなかった。

「と、とりあえず、改めて自己紹介するな! 俺は平賀才人。こっち風だと、サイト・ヒラガだ。よろしくな」
「サイト・ヒラガね。まあ、キチンと名乗ったんだから、私も名乗ってあげる。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「ルイズ・フランソワ……なんだっけ?」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ! 全く、失礼な平民だわ!」

 ルイズは苛々した声で言った。まあ、名前を間違えられるのは誰だって嫌だろう。けど、長過ぎて覚えられない。

「悪かったよ。で、ルイズ、俺はこれから何をすればいいんだ?」
「な、何いきなり貴族を呼び捨てにしてるのよ! とりあえず、まずは授業に行くわ。付いて来なさい!」

 いきなり呼び捨ては拙かったかな。ルイズが怒って部屋を出て行ってしまった。授業に行くって事らしいけど、とりあえずついて行くか。
 俺はルイズに連れられて部屋を出た。部屋を出ると、似た様な木で出来たドアが壁に三つ並んでいた。そのドアの一つが開いて、中から燃える様な赤い髪の褐色の肌の女の子が現れた。ルイズよりも背が高く、俺とあんまり変わらないくらいだ。彫が深い顔立ちで、突き出たバストが艶かしい。一番目と二番目のブラウスのボタンが外れていて、豊満な胸元を覗かせている。

「おはよう、ルイズ」
「……おはよう、キュルケ」

 爽やかに挨拶をするキュルケという少女に、ルイズはまるで台所に現れた黒いアイツを見てしまったかの様な眼で心底嫌そうに挨拶を返した。

「あなたの使い魔って、ソレ?」

 ルイズの気持ちが分かった気がする。初対面の人間捕まえてソレ扱い、失礼な奴だ。

「……そうよ」
「あっはっは! 本当に人間なのね! すごいじゃない!」

 夜中の海外の通販番組でこんなリアクションを視た事ある気がする。

「サモン・サーヴァントで、平民を喚んじゃうなんて、貴女らしいわ。さすがはゼロのルイズ」

 ルイズの白い頬に朱がさした。恥しいのだろうか? コルベールの炎蛇も大概恥しい気がするけど、彼は実に堂々としていたじゃないか。大人と子供の器の違いだろうか。
 俺は改めて、コルベールの器のでかさを感じた。

「うるさいわね……」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で成功よ」
「そ、そう……」
「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ。御覧なさい、私のフレイムよ!」

 キュルケは勝ち誇った様子で自分の部屋から使い魔を呼んだ。現れたのは巨大な真っ赤なトカゲだった。ワニよりも巨大なそいつは、口の中に火を含んでる。ムッとした熱気が辺りに立ち込める。

「か、怪獣!?」

 慌てて後ずさると、キュルケが笑い出した。

「おほっほ! もしかして、貴方、サラマンダーを見るのは初めて?」
「く、鎖に繋いどけよ! こんなの暴れたら大変じゃんか!」
「大丈夫よ。あたしが命令しない限り、襲ったりしないから。臆病ちゃんねぇ」

 キュルケはトラ程もある巨体で尻尾が炎で出来ているサラマンダーの頭を撫でた。熱くないのだろうか?

「そばに居て、熱くないのか?」

 疑問に思った事をそのまま尋ねた。よく見ると、かっこいいかもしれない。なるほど、ルイズが嘆いたのも分かるかもしれない。俺だったら絶対にこっちの方がいいもん。

「あたしにとっては涼しいぐらいね」
「火竜山脈のサラマンダー……」

 ルイズが心底羨ましげに呟いた。

「そうよぉ。見てよこの尻尾! 鮮やかな炎の尻尾! こんなに美しい炎は視た事ないわ」
「良かったわね……」

 ルイズが惨めそうに言った。

「素敵でしょ。あたしの属性にぴったり!」
「あんたの属性は火だもんね」
「ええ、あたしは微熱のキュルケ。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」

 キュルケは自慢げに胸を張った。ルイズも負けじと胸を張り返す。微笑ましいというか、哀れみを誘うというか……。

「あ、あんたみたいに、色気を振り撒くほど、暇じゃないのよ!」

 キュルケは余裕の態度でルイズを無視して俺を見た。

「あなた、お名前は?」
「サイトだ。サイト・ヒラガ」
「サイト・ヒラガ……。変な名前ね」
「やかまし!」

 本当に失礼な女だ。

「じゃあ、お先に失礼」

 炎の様な赤髪をかきあげ、颯爽と去って行くキュルケを、サラマンダーがチョコチョコと巨体に見合わぬ可愛い動きで追って行く。
 その姿を見ながら、ルイズが癇癪を起した。

「くやしー! 何なのあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって、ああもう!」
「何だよ、あの女! 人をソレ扱いしたり、人の名前、変とか言いやがって!」

 俺もムシャクシャして怒鳴り散らした。二人でキュルケの悪口を言いながら授業の教室に到着した。
 教室には様々な怪物……もとい、使い魔達を連れたメイジで溢れていた。

「うわっ、凄いなこりゃ」

 魔法学院の教室は、まるで大学の講義室の様だった。一番下の段に教卓があって、階段のように席が並んでいる。だけど、大学の講義室とは決定的に違う所がある。この教室は全てが石で出来ているのだ。机も椅子も硬い石で出来ている。
 俺達が入ると、席に着いていた生徒達が一斉に振り向いた。皆、俺とルイズを見て笑っている。隣を見ると、ルイズが顔を赤らめながら俯いてサッサと歩き出してしまった。ルイズは席に座った。俺も隣に座ろうと思って歩み寄ると、何故か睨んできた。

「なんだよ」
「ここはね、メイジの席。使い魔は座っちゃ駄目」

 ルイズの言葉に、俺はカチンと来た。

「何でだよ?」
「常識なの」
「んなの知るかよ! 床に座れってのか?」
「それが嫌なら立ってればいいじゃない」
「どこの王女様だ!」

 パンが無いならケーキをってか? 周りを見渡すと、改めて分かった。ルイズは俺を人間扱いしてないらしい。最初は、ネグリジェ姿を見たからかと思ったけど、ルイズもキュルケと変わらないらしい。俺はイラつきが抑えられなかった。憮然としながら床に座った。
 段々生徒の数が増えて来て、俺の事を迷惑そうに見てくる。俺はやっぱり納得いかなくて、黙ってルイズの隣に座った。今度は何も言って来なかった。
 俺は辺りを見渡しながらルイズに質問した。

「なあ、あのでかい目玉のお化けは何だ?」
「バグベアーよ」
「あの蛸人魚は?」
「スキュア」

 苛々した声だったが、ルイズは律儀に答えてくれた。これで、俺を人間扱いしてくれるなら悪い奴じゃないって思えるんだけどな。
 何だか木の枝みたいなのを机においている奴が居た。何かと思ったら、ボウトラックルっていう擬態の得意な生き物らしい。猿と蛙を足して二で割った様なクラバート、サイみたいなでかいのはエルンペント。亀みたいな外見で甲羅に宝石が散りばめられているのはファイア・クラブという蟹らしい。妙な生き物がいっぱいだったけど、見ているだけで面白かった。
 しばらくすると、席が生徒でいっぱいになって、中年の女の人が教室に入って来た。紫色のローブに身を包み、帽子を被っている。ふくよかな頬が、優しい雰囲気を漂わせていた。

「あのおばさんが先生か?」
「そうよ」
「コルベール先生の授業かと思ってたんだけど」
「コルベール先生は一年生の授業も受け持ってるの。今は一年生の授業をしている筈よ。私が受けるのは土の魔法の授業」

 ルイズは素っ気無く返事を返してきた。

「皆さん」

 先生が喋り始めると、教室は静まり返った。

「春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」

 そう言えば、春があるって事は、ここにも春夏秋冬があるのかな?

「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」

 シュヴルーズがとぼけた声で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。受け狙いとしては大当たりだけど、ルイズは恥辱のあまりに顔を真っ赤にして俯いてる。

「ゼロのルイズ! 召喚出来ないからって、その辺を歩いてた平民を連れて来るなよ!」

 金髪のふとっちょがルイズを指差しながら言った。
 ルイズは立ち上がって、やわらかいブロンドの髪を靡かせながら反論した。段々と言い合いが過激になって、このままだと乱闘になりそうって時になって、漸くシュヴルーズが仲裁した。
 クスクス笑ってた生徒達も口に粘土を突っ込まれて黙らされた。過激な体罰だ。

「では、授業を始めますよ」

 咳払いをしながら、重々しく言うシュヴルーズ。教卓の上に乗っている机に石ころを数個転がした。

「私の二つ名は赤土。赤土のシュヴルーズです。土系統の魔法を、これから一年間、皆さんに講義します。魔法の四大系統をご存知ですね? ミスタ・グラモン」

 殆どの生徒の口が粘土で塞がれている中で、金髪の巻き毛の少女の隣で喋っていた胸元を大きく開けた可愛らしい顔立ちの少年にシュヴルーズは当てた。

「あ、はい! 火、水、土、風の四系統です!」

 慌てて彼女とのストロベリートークを切り上げて、グラモンという少年はシュヴルーズの質問に答えた。
 四大系統ってのは、よく、ゲームに出て来る四大元素ってのと同じらしい。

「正解です。さすがは青銅のギーシュ・ド・グラモンですわね」

 シュヴルーズに褒められ、ギーシュという少年は照れた様に席に座って、隣の女の子に笑い掛けた。隣の女の子は呆れ半分に微笑み返している。

「今は失われた系統魔法である虚無を合わせて、全部で五つの系統がある事は、皆さんも存じているとおりです。その五つの系統の中で土は最も重要なポジションを占めていると私は考えてます。それは、私が土系統だから、というわけではありませんよ。私の単なる身びいきではありません」

 シュヴルーズは再び重い咳払いをした。

「土系統の魔法は、万物の組成を司る、重要な魔法です。この魔法がなければ、重要な金属を作り出すことが出来ないし、加工する事も出来ません。大きな石を切り出して建物を建てる事も出来なければ、農作物の収穫も、今より手間取る事でしょう。この様に、土系統の魔法は皆さんの生活に密接に関係しているのです」

 何だか難しい話が続いた。シュヴルーズは土系統の重要性をくどいくらい説明している。
 俺は早く魔法が見たかったから、つまらない内容の授業で欠伸が出そうだった。
 長々とした説明が終わると、一年生の復習の錬金とやらをするらしい。いきなり石ころが金色になって吃驚した。
 キュルケも驚いたらしく、それは金か? と聞いたけど、残念ながら真鍮らしい。
 それでも、いきなり石ころが真鍮に変わってしまう瞬間を見た俺は興奮していた。
 この星に来て、キチンと魔法らしい魔法を見たのはこれが初めてだ。本当に魔法が存在するのだ。そう実感すると、感動に打ち震えた。後で、ルイズに色々と見せてもらおう。
 シュヴルーズの話を聞いていると、ラインとかトライアングルとかいう単語が出て来た。皆はどういう意味なのか知ってるみたいで、説明が無い。俺はルイズに聞いてみた。

「系統を足せる数の事よ。それで、メイジのレベルが決まるの。例えばね? 土系統の魔法はソレ単体でも使えるけど、火の系統を足せば、更に強力な呪文になるの」
「なるほど」
「単体ならドット。火と土みたいに、二系統を足せばライン。シュヴルーズ先生みたいに土と土と火みたいに三つ足せるのがトライアングルメイジってわけ」
「同じの足すのは意味あるのか?」
「同じ系統を足すと、その系統が強力になるのよ。例えば、火を二つ足したら大きな火になるし、風を二つ足せば強風になる」
「なるほど、つまり、あの先生はトライアングルだから、強力なメイジってわけか」
「そのとおりよ」
「ルイズは幾つ足せるの?」

 俺が聞くと、いきなりルイズは黙ってしまった。どうしたのかと思うと、シュヴルーズにお喋りを見咎められてしまった。

「ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
「授業中にお喋りをするのは、私の授業がつまらないからですか?」
「い、いえ……」
「でしたら、そうですね、貴女に錬金の実践をしてもらいましょうか。お喋りをしている余裕があるのなら、出来ますわね?」

 シュヴルーズの皮肉に、ルイズは顔を青褪めさせた。見ると、何故か別の席のキュルケやギーシュ、金髪のふとっちょや他の生徒達まで青褪めている。
 何だろう、嫌な予感がヒシヒシと感じられる。キュルケが血相を変えて口を開いた。

「やめた方がいいです!」

 声を荒げて言うキュルケに、シュヴルーズは目を丸くした。

「どうしたというのです? ミス・ツェルプストー」
「危険です!」

 キュルケがきっぱりと言うと、教室中の生徒達が一斉に頷いた。何だろう、更に嫌な予感がする。

「危険? どうしてですか?」
「ルイズを教えるのは初めてですよね?」
「ええ、でも、彼女は努力家であるという評価を聞いております。さあ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れては何も出来ませんよ」
「ルイズ、止めて!」

 キュルケは必死だ。顔が真剣だ。馬鹿にしているとかじゃない。本気で懇願している。
 嫌な汗がダラダラと背中を伝った。

「やります!」

 実に凛々しく、ルイズは立ち上がって教卓に向かった。その間に、生徒達は一斉に使い魔を抱き抱えて、机の下に潜った。
 どういう事だ? 視線を向けると、キュルケが机に隠れろとジェスチャーしてる。その顔は死人の様に真っ白だ。一体何が起きるんだ?
 その答えは、爆発という結果と共にやって来た.おかしい、彼女は錬金をした筈だ。どうして爆発するんだ? 錬金って、材質を帰るものだって、シュヴルーズが言ってた気がするのに。
 爆風をモロに受けたシュヴルーズとルイズは黒板に叩きつけられた。キュルケのサラマンダーは気持ちのいいお昼寝を邪魔されて起こって火を吐いている。マンティコアは窓を突き破って外に飛んでいった。
 教室中が阿鼻叫喚の地獄絵図に変わる。俺も爆風のせいで煤だらけになってしまった。なるほど、キュルケや皆が真っ青になった理由が分かる。こうなる事を知ってたんだ。

「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」

 キュルケがサラマンダーを必死に落ち着かせながら叫んだ。

「もう! ヴァリエールを退学にしてくれよ!」

 悲痛な叫びが教室中から聞こえる。シュヴルーズは床に倒れたまま動かない。時折、痙攣している様子から、死んでは居ないらしい。
 ルイズの方は何とか立ち上がったが、その姿は無惨だった。ブラウスやスカートは破けて下着が見えてしまっている。
 声を掛け辛い……。ルイズは視線を泳がせながら言った。

「ちょっと、失敗みたいね」

 やっぱり失敗したのか……。

「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」
「いつだって、成功の確率、殆どゼロじゃないか!」

 ああ、なるほど、漸く分かった。ルイズがどうしてゼロの二つ名を恥しがったのか。
 成功率ゼロのルイズか――――。

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