第十一話「ドラゴンの卵」

「ニコラス・フラメル?」

 ハリーの口から出た名前にハーマイオニーは首を捻った。

「うん。実は皆が家に帰ってる間、僕達何度かハグリッドの小屋に行ってたんだ」
「そこで、ハリーが新聞の切抜き記事を見つけたんだよ」
「新聞の切り抜きって?」
「これだよ」

 ハリーはよれよれな新聞の切れ端を見せた。
 見出しには【グリンゴッツ侵入される】と大きな文字が躍っている。魔法省は犯人が未知の闇の魔法使い、もしくは魔女の仕業では無いかと考えているらしい。

「実はこの侵入された日付けは僕がハグリッドと一緒にグリンコッツに行った日なんだ。その日、ハグリッドはホグワーツの仕事で何かを金庫から取り出したんだ」
「何かって?」

 ハーマイオニーが聞いた。

「それはまだ分からない。でも、覚えてるかい? 四階の禁じられた廊下の事」
「忘れたくても忘れられないわよ」

 ハーマイオニーは身震いをしながら言った。

「君、あそこに居た三頭犬が足元の扉を護っているって言ったよね?」
「ええ、言ったわ」
「それで、僕考えたんだ。もしかしたら、ハグリッドはこの侵入した闇の魔法使いから奪われる前に間一髪でこの何かを回収して、あの扉の向こうに隠したんじゃないかって……」
「……一応、筋は通るわね。だけど、推測に過ぎないわ。それに、仮にそうだとして、そのニコラス・フラメル……? はどう関係してくるの?」

 ハーマイオニーの疑問に答えたのはロンだった。

「ハグリッドが漏らしたんだよ。あの犬が護っているのはダンブルドアとニコラス・フラメルに関係しているって」

 ハーマイオニーは難しい顔をして黙り込んでしまったけど、しばらくして降参だとばかりに首を振った。

「ユーリィも心当たりはない?」

 ハリーの言葉に俺は少し考え込んだ。ここで情報をハリー達に教えていいのか、という疑問だ。もちろん、教えた方がハリー対クィレルの決戦という方向には持って行きやすい。
 クィレルを倒せる可能性が一番高いのは他の誰でも無いハリーなのだから、ここで一気にクィレルに近づいてもらうのは悪い手では無いだろう。
 だけど、それは同時にハリーを、ひいては皆を危険に近づける行為だ。万が一にもヴォルデモートとの決戦で命を落とす者が居ないとも限らない。

「ユーリィも知らないか……」

 俺は小さく首を振った。

「ニコラス・フラメルは賢者の石の製作者だよ」

 俺の言葉にハリー達は驚いたような表情を浮かべた。
 迷った挙句に出した答えはこれだった。結局、どうあっても正しい答えなんて出ない。もう、とっくに本の通りには進んでいないのだから、結局は出たとこ勝負で挑むしかないのだ。
 俺は自分の事をそれなりに理解している。俺の性格は臆病で、視野が狭い。生まれ変わって、十一年の年月を重ねて、漸く俺は少しずつ分かってきた気がする。
 虐められて当然の人間だった。いつも俺は回りに対して猜疑心を抱いていた。嫌われないようにどうすればいいか、そういう卑屈な事ばかりを考えて、自分を取り繕って生きて来た。
 必死に作った偽者の自分を周りの人達は簡単に見抜いてしまう。そして、嫌われる。
 素の自分を隠して、薄ら笑いを浮かべて、その癖内心では人を疑う事しかしない人間を誰が好きになる?
 それが答えだ。両親だってそう。こんな人間が自分の子だなんて、苛立って当然だ。
 だから、もうあまり考えるのはよそう。ただ、努力しよう。この優しくて、笑顔が溢れている世界がどこまでも続いていくように努力しよう。
 危険は避けられない。だから、戦おう。戦う為の手段はあるのだから。そして、備える為の手段があるのだから……。

「賢者の石……?」

 アルは首を傾げた。周りを見ると、ハーマイオニー以外はみんな目を丸くしている。
 俺は小さく深呼吸をすると言った。

「賢者の石は錬金術師が一種の到達点として定めた物質なんだ。投射の粉末、ラピス、万能第五要素、色々と呼び名があるけど、その力はあらゆる金属を純金に変え、病人を治癒し、命を永らえさせる事が出来るそうだよ」
「凄いね、ユーリィ。よく、そんな事知ってるね」

 ネビルの賞賛の眼差しがちょっと嬉しかった。
 ハーマイオニーは少し悔しそうにしている。自分の知らない事を誰かが知っているのが我慢出来ない性格なのだろう。
 アル達は目を丸くしたままだ。

「じゃあ、あの犬が護っているのは賢者の石なのか……?」

 ロンが言った。

「それは分からないけど、賢者の石はニコラス・フラメルとダンブルドアが共同で研究したものなんだ」
「つまり、可能性は極めて高いというわけね」

 ハーマイオニーの言葉にみんな一斉に頷いた。

「でも、そんな物を一体誰が狙ってるんだろう?」

 ハリーの問いに応える者は居なかった。
 
第十一話「ドラゴンの卵」

 授業が始まるまではまだ一日猶予があった。
 大広間で食事を取り、廊下で明日からの授業についてハーマイオニーと話しながら歩いていると先の方が騒がしくなっていた。
 何事かと思って駆け寄ると、信じ難い光景が広がっていた。
 そこにはネビルとマルフォイ、それにマルフォイの仲間達が居た。マルフォイはニヤニヤと笑いながらネビルに杖を向けて呪いの呪文を唱えていた。
 まるでタップダンスを踊るかのように必死に呪いを避けるネビルにマルフォイ達はおおいに笑っている。その光景に鳥肌が立った。
 もう十一年も経つのに記憶に焼きついて離れない生前の記憶。
 エアガンを持った同級生に的にされて、止めて、と泣き叫んで懇願しても止めてもらえなくて、全身が痣だらけになった事が何度もあった。
 心臓を握り締められるような感覚に俺は吐き気がした。

「あんた達、何してるのよ!?」

 真っ先に動いたのはハーマイオニーだった。だけど、ハーマイオニーがマルフォイの杖を取り上げようとすると、グラップとゴイルが立ちはだかった。

「何してるのかって? ちょっと、試してみたい呪文があってね。ロングボトムに協力してもらってるのさ」

 愉快そうに言うマルフォイにハーマイオニーは拳を振り上げようとしたけど、クラップとゴイルに逆に押さえ込まれてしまった。

「覚えたばっかりの呪いを試してやるよ。光栄に思えよ? ロングボトム」

 悪意に満ちたマルフォイの言葉に俺は無意識に杖を握っていた。
 マルフォイが呪いの呪文を唱えると同時に俺はネビルに向けて杖を向けた。

「プロテゴ!!」

 ネビルの周囲に目に見えない膜のようなものが現れ、マルフォイの呪いがそのままマルフォイに跳ね返った。
 すると、マルフォイが悲鳴を上げてひっくり返り、クラップとゴイルが真っ赤な顔をして襲い掛かって来た。 
 頭がガンガンする。ただ、分かるのはこれで標的が俺になったという事だ。なら、それでいい。
 少なくとも、これでネビルに何かをされる事は無くなったと考えるべきだろう。

「ハーマイオニー。ネビルと一緒に先に戻ってて」

 妙に頭の中が冷静になった。ゴイルの拳が振り上げられるのを見つめながら、そんな台詞が吐けるくらいに。

「ユーリィ!!」

 ハーマイオニーが悲鳴を上げた。
 殴られた。ゴイルに殴られて、俺は地面に倒れた。
 懐かしい感覚だ。
 生前に慣れ親しんだ感覚だけど、生まれ変わってから、こうして誰かに殴られたのは初めてだった。
 いや、そんな事無いか……。
 昔、生まれ変わってから一度だけ、同じような事があった気がする。
 いつの事だったかな……?

「止めて!! 止めなさいよ!!」

 ハーマイオニーの絶叫を聞きながら、俺はただ黙って殴られた。
 痛いけど、これでネビルやハーマイオニーが傷つかなくて済むなら、ずっとマシだ。
 でも、ちょっと情け無い気持ちになった。
 生前、好きな女の子が居た。だけど、その子の前で俺は今みたいに何も出来なくて、ただ黙って殴られた。俺を見るあの子の目は今でも覚えてる。
 ダサい。情け無い。男の癖に。そんな言葉が篭められた冷たい目だった。
 ああ、痛みが酷くなって来た。もう、意識が飛びそうだ。その時だった。唐突に痛みの連鎖は止まった。
 どうしたんだろう? 瞼が腫れて、よく見えない。全身が痛い。耳も少しおかしくなってる。
 誰かが必死に俺の名前を呼んでる気がする。まるで水中に居るみたいに酷く濁った声だけど、なんとなく声の主が分かった気がする。

「ア……ル……」

 突然、浮遊感に襲われた。誰かに抱えられている。この臭いはアルだろうか?
 俺の体重は平均より軽いくらいだけど、それでもこんな風に軽々持てるなんて驚きだ。
 いつの間にこんなにたくましくなったのだろうか。俺は不思議な安心感に包まれながら意識を手放した。

 目が覚めたのはお馴染みの保健室だった。
 俺はこのたった三ヶ月の間に何度マダム・ボンフリーの手を煩わせているのだろう……。
 
「ああ、目が覚めたのね?」

 俺が目を覚ましたのを確認すると、ボンフリーは俺の全身のあちこちを触ってチェックした。

「もう、大丈夫みたいだわ。まったく、入学早々でこんなに保健室に通う子はそうは居ませんよ?」

 そう言うと、ボンフリーは俺に寮に戻って大丈夫と言ってくれた。前みたいに骨折したり、闇の魔術の影響があったりするわけじゃないから痛みが残っていなければ問題無いそうだ。
 窓の外はもうすっかり暗くなっていた。どうやら、もう就寝時間まで一時間あるかないかという時間らしい。
 動く階段が中々動いてくれないせいで、余計に時間が掛かった。
 寮に入ると、暖炉の前で見知った顔が揃っていた。

「みんな、まだ起きてたんだ」

 俺が声を掛けると、皆が一斉に振り向いた。

「ユーリィ! もう大丈夫なの!?」

 ハーマイオニーは読んでいた本を放り出して駆け寄って来てくれた。
 ハリーとロンも対戦中のチェスを放棄して駆け寄って来てくれた。
 アルとネビルは酷い顔をしていた。顔色が悪いし、酷く陰鬱な顔をしている。

「うん、もうすっかり大丈夫。心配掛けてごめんね」
「まったくだよ。無茶し過――――」

 ロンが溜息混じりに口を開くと、言葉を遮るようにアルが俺の前に来た。
 びっくりしてアルの顔を見上げると、その顔は怒りに満ちていた。
 こんなアルの顔を俺は見た事が無かった。

「僕、言ったよね? もう無茶するなってさ」

 そう言われて、さすがにちょっとムッとなった。

「だって、あのままじゃ……」

 ネビルが虐められていた。そう言い掛けて、思わず口を噤んだ。これだと、ネビルのせいにしているみたいだったからだ。
 だけど、今度はネビルまで怒り心頭な顔で口を開いた。

「もう、僕の事なんて放っておいてよ」
「……え?」
「ちょ、ちょっと、ネビル!?」

 ハーマイオニーが止めようとするけれど、ハリーが待ったを掛けた。

「あんな無茶な事されるんなら、もう、君とは友達で居られない……」
「な、なんで……? なんで、そんな事言うの……?」

 泣きそうになりながら聞いた。
 分からなかった。
 間違った事をした気は無かった。折角出来た友達の為に助けに入っただけだ。
 それなのに、どうして離れて行くのか理解出来なかった。

「お、俺、何か悪い事したの?」
「とにかく、僕の事はもう放っておいて」

 そう言うと、ネビルは背を背けて寝室の方へ行ってしまった。
 追いかけようとしても、足に力が入らなかった。
 漸く出来た友達だったのに、嫌われてしまった。その事実があまりにも重くのしかかってきた。

「僕、ちょっと話してくるよ」

 ハリーはそう言うとネビルを追って寝室に向かった。

「ま、まあ、ネビルもちょっと気が立ってたんじゃないかな?」

 ロンはなんとか場の空気を変えようとしているのか、少し軽い口調で言った。

「そ、そうよ。一日置いて話せばきっと大丈夫よ」
「ほんと……?」

 俺が聞くと、ロンもハーマイオニーも力強く頷いた。
 少しだけホッとすると、アルが大きな溜息を零した。

「アル……?」
「君はさ、頭良いけど、バカだよね」
「……えっと?」
「本当、こっちの気持ちをもっと察して欲しいよ」
「えっと……、その、ごめん」
「謝って欲しいんじゃないんだよ」

 呆れたように言うアルに俺はどうしたらいいのか分からなかった。

「僕もネビルも君が怪我をするのが嫌なんだよ」
「……アル」
「それも、自分のせいで君が怪我をした、なんて最悪だ。自分が殴られた方がずっとマシだよ」
「それは……」
「もう、頼むからこれっきりにしてくれ。どうしても、助けたいっていうなら、僕を呼んでくれよ。ただ、無防備になって殴られるなんて、絶対に止めてくれ」
「……でも」
「でもじゃない。君がそんなんじゃ、僕は何のために……」

 アルは何かを言い掛けて止めた。代わりに大きな溜息で自分の胸に詰まった何かを吐き出したかのようだった。

「とにかく、一人で無茶をするのだけはやめてくれ。頼むから……」
「……う、うん」

 俺が頷くと、アルは「約束したからな」と睨み付けてきた。
 なんだか、今日のアルは怖い。俺はもう一度小さく頷いた。

「ほ、ほら、マシュマロがあるの。一緒に焼いて食べましょうよ」

 ハーマイオニーの言葉に頷いて、俺は一緒にマシュマロを暖炉で焼いて食べた。
 他にもパンやクラッカー。焼ける物を何でもかんでも焼いて食べていると、アルの機嫌も少しは良くなったみたいだ。
 まだ、よく分かっていないのだけど、明日朝一番にネビルに謝ろうと思う。
 きっと、仲直り出来る。俺は自分にそう言い聞かせて、朝を迎えた。
 
「昨日はごめんよ」

 目が覚めて直ぐ、ネビルに先制されてしまった。
 謝ろうと思っていたのに謝られてしまって、口を開いたまま固まっている俺にネビルは重ねるように言った。

「助けて貰ったのに本当にごめん。僕、どうかしてたよ……」
「ううん。俺の方こそ……」
「謝らないで。全部僕が悪いんだ。お願い……」
「……うん」

 嫌な沈黙が続いた。その沈黙を破ったのはハリーだった。

「今日さ、皆でハグリッドの所に行こうよ」
「え……、あ、うん」

 俺はネビルを見た。申し訳無さそうにしている彼に俺は小さく深呼吸をするとニッコリ笑った。

「一緒に行こうね」
「……うん」

 
 休暇明け最初の授業でも、先生達はまったく手加減無しだった。宿題もドッサリ出て、また忙しくなりそうだ。
 放課後になって、俺達はハグリッドの小屋に向かった。
 今回はハーマイオニーも一緒だ。大人数で押し掛けて迷惑じゃないかとも思ったけど、ハグリッドならきっと歓迎してくれる筈、というハリーの意見を採用する事となった。
 ハグリッドの小屋に到着すると、何だか様子が以前と少し違っていた。

「なんか変じゃないか?」

 ロンが言った。
 俺も同意権だ。ハグリッドの小屋は窓が全てカーテンで締め切られている。
 ハリーがノックをすると、ハグリッドはまるで何かを警戒しているかのように小さく扉を開き、来訪者の顔を一つ一つ確認した。

「お前さんらか。何か用か?」
「あ、僕達、ちょっと遊びに来ただけなんだ。その……、迷惑だったかな?」

 ハリーが言うと、ハグリッドは少し迷うような素振りを見せ、渋々といった感じに扉を開いた。

「まあ、入れや」

 ハグリッドに誘われて中に入ると、中はもわっとするような暑さだった。
 茹るような熱さに皆が呻き声を上げると、ハグリッドが焼き立てらしいソーセージを人数分出してくれた。

「そっちの子は初めましてだな」

 ハグリッドがハーマイオニーを見ると、ハーマイオニーは緊張した面持ちで背筋を伸ばした。

「は、初めまして、ハーマイオニー・グレンジャーです」
「よろしくな。知っとるだろうが、ルビウス・ハグリッド。森と領地の番人だ」

 ヒゲをいじりながら誇らしげに言うハグリッドにロンはうんざりした様子で窓を見た。

「ねえ、ハグリッド。窓を開けていい? このままじゃ茹っちゃうよ」

 すると、ハグリッドは焦ったように「いかん!」と言った。
 突然の大声にびっくりする俺達を尻目に、ハグリッドの眼差しは暖炉へ向けられていた。
 よく見ると、暖炉には鍋が掛けられていて、その中に黒い卵があった。

「大きいね。ダチョウの卵?」

 俺が言うと、ロンは「馬鹿言うな!」と興奮した様子で言った。

「ハグリッド。これ、ドラゴンの卵だろう? どこで手に入れたの!? 凄く高かっただろう」

 ドラゴンの卵、という事はこれがノーバートの卵という事か。
 ドラゴンの卵はもっと大きいと思ってたから間違えてしまった。
 ハグリッドは賭けで手に入れた、というけどもうクィレルに三頭犬の攻略法を教えてしまったという事だろう。
 もう、あまり時間が無いらしい。

「この【趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方】ってので勉強しとるんだ」

 ハグリッドは分厚い――ハグリッドが持ってると小さく見えるけど――を見せながら言った。

「なんでも、卵は母竜が息を吹き掛ける様に卵は火に置けとある。そんで、孵った時にはブランデーと鶏の血を混ぜて三十分ごとにバケツ一杯飲ませろとある。それとここんとこ見てみろ」

 ハグリッドは卵の見分け方という欄を俺達に見せた。

「これによると、俺のはノルウェー・リッジバックという種らしい」

 ハグリッドがご満悦そうな顔で言うので、水を差すのは気が引けたけど、今の内に言っておいた方がいいだろう。

「ハグリッド」
「なんだ? ……ユーリィだったな」
「うん。ハグリッドはノルウェー・リッジバックがどういうドラゴンか知ってるの?」
「いや、よく分からん。だが、ちゃんと勉強して、立派に育ててみせる」

 期待に満ちた顔で言うハグリッドに俺は罪悪感を抱きつつ言った。

「ハグリッド。ノルウェー・リッジバックはハンガリー・ホーンテイル種の次に凶暴で、時には人を食べる事もあるんだよ?」

 俺が言うと、ハグリッドは目を泳がせた。
 ハーマイオニーはきつい目をハグリッドに向けた。

「孵ったら大変じゃない!? 今すぐにドラゴンの保護地区に送るべきだわ!!」
「俺もそれがいいと思う。残念だと思うだろうけど、どちらにせよノルウェー・リッジバックは北国に生息するドラゴンだから、ここでは生きていけないよ」

 俺の言葉にハグリッドはしどろもどろになった。

「しかしだな。折角、手に入ったわけだし、それに……」
「森と領地の番人!!」

 ハーマイオニーは声を張り上げた。

「番人が中に人喰い竜を解き放つなんてナンセンスだわ!!」
「育つのもかなり早くて、一ヶ月で火を吐けるようになっちゃうんだ。卵の内になんとかするべきだよ」
「も、もう直ぐ孵るんだ!! い、今放り出したら、卵の中で死んでしまうかもしれんじゃないか!!」
「孵ってからじゃ遅いのよ!?」
「か、孵ったらキチンと保護地区に送る。しかしな、今の状態では放り出すわけにはいかん。さあ、もう遅い時間だ。お前さんらも帰った方がええ」
「だ、だけど、ハグリッド!」
「さあ、帰っとくれ」

 俺達はハグリッドに追い出されてしまった。

「まずいよ。ドラゴンを許可無く飼うのは犯罪なんだ。このままにはしておけないよ」

 ロンの言葉に俺達はハグリッドの小屋を見つめた。
 

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