第九話「運ばれて来た手紙」

第九話「運ばれて来た手紙」

 翌日の日刊予言者新聞の一面をスクリムジョールの魔法省大臣就任のニュースが飾った。
 新聞には彼の挑戦的とも思える大臣の就任演説の内容が載っている。

『既に御存知の方もいらっしゃるでしょうが、闇の帝王は復活を遂げました。昨今の闇の印は彼の者が十五年前同様に勢力を伸ばしつつある証なのです。だが、これ以上、闇の勢力が助長を私は決して許さん。帝王に組する者には厳罰を課し、闇の勢力を擁護する者も放任するつもりは無い。私は闇祓い一同、並びに闇の勢力と戦う決意を固めた魔法使い達の連合組織・不死鳥の連合に対し、闇の魔法使いへの殺害行為の許可を与える。私を悪だと罵倒するのは全てが終わった後にして頂きたい。帝王を下した暁には死刑台でもアズカバンでも何処にでも参る所存。……私は歴代最悪の魔法大臣として名を残す事になるだろう。だが、私の決意は変わらない。闇の勢力に関わる者は須らく私の敵であり、殲滅すべき害虫である。私は害虫を一匹残らず駆除する。これが私の魔法省大臣として唯一掲げるマニフェストである』

 記事が載ったその日に魔法省内で闇の勢力を擁護する動きを見せた者達が軒並みアズカバンへ送られた。その中にはユーリィの話にあったリータ・スキータという記者の名前もあった。
 あまりにも迅速な動きだった為に魔法省内では反発も起きたようだけど、そちらに関してスクリムジョールは何もしなかった。
 代わりに新たな闇祓い局局長となったガウェインを初めとした連合の面々が火消しに走った。
 慌しい動きの中には新たなメンバーの加入もあった。ロンの二人の兄であるチャーリーとビルだ。二人もいよいよ帝王の復活とあってはジッとしていられないと、両親の反対を押し切り参加を決意した。他にも少しずつ連合に参加しようという魔法使いが増え始めているらしい。
 スクリムジョールの方針は一方的な独裁政治であったが、帝王に怯える善の魔法使い達にとっては心強く、少しでも助けになるならば、と各地で動きが起きている。例えば、リトル・ハングルトンの住民皆殺しの一件をスクリムジョールが公表した事で、マグルを守ろうとする動きが活発化している。自分の住む村のマグルの住人達を守る為、彼らに保護の呪文を掛ける魔法使いが続出し、スクリムジョール本人もマグルの大臣を迅速に保護した。
 スクリムジョールの断固とした決意と迷い無き実行力に人々は惹き付けられている。
 だけど、そうなると面白くないのが闇の勢力だ。スクリムジョールの大臣就任から二日後、ついに奴らは動き出した。各地でマグルやマグルを擁護する魔法使いを襲い始めたのだ。
 スクリムジョールは迅速な動きでロンドン全域に監視のネットワークを作り上げていたが、イギリス全土をカバーするには時間が足りず、連合が間に合わない事が少なからずあり、闇の印が天を覆っては、憤りを深めた。幾度と無くぶつかり合い、その度に連合は疲弊した。あまりにも攻撃頻度が多過ぎた。二日間で二十箇所以上が襲われ、ミレニアムブリッジが落とされるのを連合は防げなかった。その事件で多くのマグルの命が奪われた。
 そして、連合側からも死者が出た。冷たい骸と化した仲間の姿が新聞に載った。スクリムジョールは彼らの死を利用する事も厭わなかった。彼らの死で死喰い人への怒りを煽り、死喰い人に対してプレッシャーを掛け続けた。

「何を急いているんだ……」

 新聞から視線を上げ、クリスが言った。

「局長……いや、大臣のやり方は短期で決着をつける為のプロパガンダだ。何か考えでもあるのだろうか……。このやり方は長続きせんぞ」
「局長の事だ。何か、考えがあるんだろう」

 エドワードの言葉にクリスは肩を竦めた。

「我々にも考えを明かさないとはな」
「裏切り者が続出したからな。可能な限り、情報を秘匿しようとしているのだろう」
「我々は局長を信じるのみ……か」

 連合の会議室として使っている変身術の教室は重苦しい空気に包まれた。
 クリスが苛立つのも分かる。ここ数日、激化する闇の勢力との戦いで皆、すっかり疲弊してしまっている。
 その上、仲間内にまで情報を秘匿するスクリムジョールに不信感を持つ者が現れ始めている。疑心暗鬼な雰囲気が漂い、それが余計に空気を悪くしている。

「居るか、ポッター」

 突然、教室の扉が開き、スネイプが入って来た。
 五日前のリトル・ハングルトンでの戦い以来、地下の研究室に篭りきりだった彼が皆の前に姿を現すのは初めてだった。

「出来たのか?」

 シリウスが尋ねると、スネイプは小さく頷いた。

「失敗をする訳にはいかんからな。細心の注意を払い、調合した為に五日も掛かってしまった」
「ハリーの為ならば、万全を期すべきだ。ありがとう、スネイプ」
「礼など要らん。我々の勝利の為にも必要なプロセスだ」
「……だな」

 スネイプとシリウスは初日の険悪な雰囲気からは想像もつかないほど良好な関係を築いている。喜ばしい事だけど、これから待ち受ける分霊箱摘出の儀式に対する恐怖で僕は気が気じゃなかった。
 ジャスパーが語った分霊箱摘出の方法とは即ち、【ヴォルデモートがジャスパーとユーリィの魂を引き離した方法】を使う事だ。つまり、僕の中の分霊箱――――つまり、ヴォルデモートの魂の断片を敢えて復活させようという試みだ。その為にアル達は五日前にリトル・ハングルトンへ向かった。ヴォルデモートの父親の骨を入手する為だ。

「ハリー」

 シリウスが優しく僕の頭を撫でた。

「怖いか?」
「……うん」
「まあ、当然だな。だが、命を捨てる選択をするよりは……」
「骨や人肉を使ったスープに身を沈める方がマシ?」

 僕の言葉にシリウスは曖昧に微笑んだ。

「分かってるよ。皆が僕の為に命を賭けて材料を集めてくれた事は分かってる。不安だけど、怯えてなんかいないさ」
「ハリー……。私がついているぞ。ハーマイオニーもだ」
「……ありがとう、シリウス」
「では、行くぞ」

 スネイプの言葉に頷き、僕は教室を出た。僕らの後にシリウスとアル、ジャスパー、マッドアイ、クリスが続いた。
 万が一にもヴォルデモートの魂の断片が暴れ出した時の事を考えての布陣だ。

「ハリー君」

 歩いていると、ジャスパーが声を掛けて来た。正直、僕は彼の事が苦手だ。
 彼がユーリィの為に必死に頑張っている事を知っているのに、どうにも彼が傍に居ると落ち着かない。
 ユーリィと同じ顔をしているせいなのか、それとも違う原因があるのか分からないけど、胸がムカムカしてくる。

「なんだい?」
「魂を分離させる時に自分の体を強く意識するんだ」
「……え?」
「それが成功の秘訣だよ。経験者としてのアドバイスさ」
「あ、うん。ありがとう……」

 よく分からないけど、僕は頷いた。すると、隣を歩いていたアルが囁くように言った。

「アドバイス……か」

 ここ数日、アルの様子が少しおかしい。一人でぶつぶつ呟きながら何かに悩んでいる姿をよく目にする。
 どうしたのか聞くと、いつもはぐらかされてしまって、今も聞けず仕舞いだ。
 まったく、水臭い。僕らは友達なんだから、悩みがあるなら相談してくれればいいのに……。
 まあ、きっとユーリィの事なんだろうけどね。アルの頭にあるのは基本的にユーリィの事だけだ。アルがユーリィを愛していると聞いた時は表面上驚きはしたものの、頭のどこかで納得していた。アルの普段の姿を思い出せば、アルがユーリィを意識していたのが分かる。

「こっちだ」

 地下の教室に人が一人入れる程の巨大な鍋が置かれていた。
 
「では、始めるぞ」

 スネイプの言葉に悲鳴が響いた。地下室には既に誰かが居た。
 小柄な男だ。彼が恐らく、マッドアイが捕えたという死喰い人のワームテール。ロンの鼠として姿を隠していた小賢しい男。シリウスを罠に掛け、僕の両親の死の原因を作った男。
 なのに、僕の胸に湧き上がったのは哀れみだった。みすぼらしい格好で、痩せ衰えた体。ユーリィの話では丸々太った男だった筈だけど、目の前の男は何日も食事をしていないかのようだった。事実、していないのかもしれない。ここに軟禁されてから、彼がどんな目に合わされてきたのか、僕は知らない。
 彼はこれから片腕を失う事になる。罪悪感は無いけど、やはり哀れに思えた。

「ピーター」

 ワームテールの本名を呟くと、彼は大袈裟に体を震わせた。怯えている。

「分かっているな、ペティグリュー」

 スネイプの氷の如き声にワームテールは飛び上がった。

「妙な真似をすれば、また我輩の懲罰を受ける事になるぞ。ここにはブラックも居る。いつもより苛烈になるやもしれんな。協力的な態度を示せば、少なくとも命だけは保障してやる。だが、逃げ出そうとしたり、反抗的な態度を取るようならば……」
「わ、分かっているよ、セブルス」

 卑屈な表情を浮かべ、瞳には恐怖の光を宿している。スネイプはサディスティックな笑みを浮かべると、シリウスに視線を向けた。
 シリウスは薄く微笑んだ。

「むしろ、反抗的になってくれても構わんぞ。鼠に変身するでもいい。ここにはネズミ捕りをふんだんに仕掛けてあるからな。逃がしはせんぞ。たっぷりと生まれて来た事を後悔させてやる」

 ワームテールはゼェゼェと息をしながらカクカクと頷いた。

「さあ、儀式を開始する」

 スネイプの言葉に僕は意識をワームテールから大鍋へと移した。鍋の中の液体はふつふつと沸騰している。色取り取りの火花が飛び散り、思わず腰が引けそうになる。
 ヴォルデモートを敢えて復活させるという試みは最初、皆を驚かせた。当然だ。下手をすれば最悪の敵を二人に増やす事になる。そもそも、そんな事が可能なのかという疑問もあった。
 ダンブルドア曰く、最も汚らわしい魔術の一つではあるが、恐らく可能だろうとの事。復活といっても、恐らく不完全なモノとなるだろうが、僕から分霊箱を摘出するのが目的である以上、完全復活などむしろしない方が良い。
 これはユーリィの例があったからこその方法だ。ユーリィとジャスパーの魂の結びつき方は僕とヴォルデモートの魂の断片との結びつき方と異なるらしい。ユーリィ達が魂同士で密着し合っているのに対し、僕らは同一の肉体内に魂が別個に存在している。むしろ、ユーリィ達に出来たなら僕らの方が出来る可能性が高い筈なのだそうだ。
 だけど、それでもココに飛び込むにはかなり勇気が居る。

「さあ、服を脱げ、ポッター」

 スネイプの言葉に僕は頷いた。羞恥心なんか感じてる余裕は無い。パンツも全部脱いで、皆が見ている前で裸になると、スネイプが朗々と呪文を唱え始めた。

「父親の骨、知らぬ間に与えられん。父親は息子を蘇らせん」

 スネイプが杖を振るうと、エメリーンとジャスパーがリトル・ハングルトンの墓地で入手したヴォルデモートの父親の骨が大鍋に沈んだ。
 ダイヤモンドのように煌く水面が割れ、四方八方に火花が飛び、毒々しい青色になった。
 
「さあ、やれ、ペティグリュー」

 ワームテールは悲鳴を上げた。恐怖に顔を歪めながら、震えた声で呪文を唱える。

「し、しもべの肉、よ、喜んで……差し出されん。しもべは……ご主人様を蘇らせん」
 
 唱え終わると、シリウスがナイフを投げ渡した。キャッチし損ねて、ワームテールは右腕を大きく切り裂かれてしまった。
 悲痛の叫び声が地下室に響く。僕は咄嗟に駆け寄ろうとして、アルに止められた。

「この愚図が……。さっさと自分の腕を切り落とせ。念の為に肘の辺りからやれよ」

 冷徹なシリウスの言葉にワームテールは咽び泣きながら頷いた。
 そのあまりにも残酷な光景に胸が痛む。だけど、僕は止めなかった。奴は両親の敵なのだと必死に自分に言い聞かせて目を瞑った。
 すると、殊更大きな絶叫と共に大きな塊が液体に落ちる音が響いた。

「この愚図はまた牢屋にでも閉じ込めておけよ」
「ああ、喧しい悲鳴を聞いているのは体に悪いしな」

 腕を失った直後のワームテールにスネイプは情け容赦無く石化の呪文を唱えた。意識を奪わずに動きを止める呪文をわざわざ選んで使った。

「えげつねぇな」
 
 ククッと笑いながら言うシリウスにスネイプは唇の端を吊り上げた。

「我輩の幼馴染を殺してくれたのだからな。相応の礼をせねばなるまい。ああ、ワームテール。言う通りにしたら殺さないと言ったな? 安心しろ。殺したりはせん。ただ、死ぬ方がマシだと思うような目には合わせるがね。お楽しみは後だ。今はその腕の痛みに興じて居るがいい」

 残酷に言い捨てるスネイプにワームテールは何を思っているのだろう。
 石化した状態のまま、顔の形すら変えられず、痛みに苛まされている。

「あ、あの……せめて、腕の治療を……」
「必要無い。命の保障をしてやるだけでも我々は寛大過ぎる程だ。だろう? ブラックよ」
「ああ、まったく俺達は心が広過ぎるな、スネイプ」

 嫌な意味で凄く仲良くなってしまった二人に不安になった。

「さあ、最後の手順だな」
「敵の血か……、俺の血を使う」

 シリウスはそう宣言すると、アッサリと自分の腕を切り裂いた。
 悲鳴を上げそうになる僕を尻目に鍋に向かって行く。

「使え」

 スネイプに血の滴る腕を向けるシリウス。

「敵の血、力ずくで奪われん。汝は敵を蘇らせん」

 腕を切り裂いたナイフをもぎ取り、スネイプは血を鍋に滴らせた。
 すると、鍋は眩い閃光を放ち始めた。

「さあ、入れ、ポッター」
「……はい!」

 僕は意を決して足を踏み出した。大鍋の口に昇る為の階段を上がり、僕は一気に中へと飛び込んだ。その瞬間、僕の意識は何かに呑み込まれそうになった。
 巨大な何かが僕を喰らおうとしているみたいだった。

【魂を分離させる時に自分の体を強く意識するんだ】

 ジャスパーのアドバイスを思い出し、必死に僕は自分の体を意識した。引き伸ばされたり、もみくしゃにされたりしながら、必死に自分の体を意識し続ける。
 奪われて堪るものか。これは僕の体だ。お前の体じゃない。
 無限とも言える一瞬が終わると、僕は割れた大鍋から吹き飛ばされていた。大鍋には何かが居る。人の形をしているけど、人じゃない。
 ソレは肌が無かった。筋肉や神経が直接空気に触れていて、ソレは悲痛な叫び声を上げた。

「……ヴォルデモート」

 僕の中に居たヴォルデモートの魂の断片だ。
 小柄な体躯の人体模型が踊っているような不気味な様相だった。

「後退っていろ、ハリー!」

 シリウスが飛び出した。その手には銀色に輝く剣が握られている。
 数日前、グリフィンドールの剣の使用が決定され、組み分け帽子から僕が取り出した剣だ。他の人がやっても何も出なかったのに、僕が組み分け帽子に手を入れると、アッサリと剣が現れた。
 資格あるグリフィンドール生のみが手に出来る剣。僕は資格ある者のようだった。
 だけど、それだけでは剣は役に立たない。だから、僕はエグレの墓に入った。ハグリットの小屋の隣にある小さな洞穴。人工的に作られたソレは嘗て、僕のペットだったバジリスク――――エグレが住んでいた住処だった。今では、エグレの墓場になっているソコに僕は入り、エグレの牙に刃を押し当てた。
 エグレを思うと今でも涙が出て来る。僕の為に命を捨てた僕の大切な友達。剣の使用が決定した時、僕は自分からエグレの毒を剣に吸わせる役目を買って出た。こんな、死体を利用するような事、したくなかった。だけど、他の誰かにやらせる気にはなれなかった。
 シリウスがグリモールド・プレイス十二番地にあるという屋敷から持って来たロケットで力を試した所、上手く破壊に成功した。
 分霊箱を破壊する力を得た剣をシリウスがヴォルデモートの魂の断片につき立てた。すると、奴は殊更大きな悲鳴を上げて四散してしまった。

「……ハリー。これからはこの剣は君が持て」
 
 シリウスは銀色に輝く剣を僕に渡した。

「うん」

 剣を持つと、僕は不思議な暖かさを感じた。まるで、エグレが僕を見守ってくれているかのような気分だった。

「……成功したな」

 マッドアイが安堵の溜息と共に言った。

「正直、疑い半分だったが、これで懸念材料が一つ減ったな」
「後、残る分霊箱は一つだ。ナギニを殺せば、もう帝王が復活する事は無い」

 クリスの言葉に一同が頷いた。

「ナギニは必ずヴォルデモートと共に居る筈だよ。ヴォルデモートと決戦する時が来たら、きっと、ナギニを殺すチャンスも来る筈」

 ジャスパーが言った。

「まずはヴォルデモートの居場所を探る事だな。……何はともあれ、ハリー、お疲れ様。よく、頑張ったな」

 シリウスに肩を優しく叩かれながら、僕は地下室を出た。
 シリウスとスネイプはワームテールの事があり、地下室に残った。彼らがワームテールに何をするつもりなのか、僕は怖くて聞けなかった。
 とにかく、これで僕の中のヴォルデモートは消えた。

「ハリー」

 変身術の教室に戻る途中、急にアルが声を掛けてきた。

「なに?」
「ちょっと、トイレ行かないか?」

 言われて、少し尿意を催している事に気がついた。

「うん」

 皆に先に行ってもらって、僕らは二人でトイレに入った。
 ふと気になって、洗面所の鏡でおでこを確認すると、驚いた事にあれほど鮮明だった傷痕が少し薄くなっていた。ヴォルデモートの魂が消えた事で、傷痕も消えようとしているみたいだ。
 不思議と寂しさを感じ、奇妙な気分になっていると、アルが僕を呼んだ。

「魂の分離の時、どんな感じだった?」
「え?」

 急に聞かれて、僕は呆気に取られた。

「頼む。聞かせてくれ」
「あ、うん。えっと――――」

 僕は鍋に入った後に感じた事をありのままに伝えた。
 すると、アルは一瞬、とても恐ろしい表情を浮かべ、次の瞬間には酷く安堵した表情を浮かべた。

「そうか……ありがとう。これで、大分確証を得られた」
「確証……?」
「……ああ、まあ、いずれ教えるさ」

 意味深な事を言いながら、アルはとっとと用を足すと、外に出てしまった。慌てて僕も用を足して外に出ると、廊下を走るソーニャに出くわした。

「あ、アル君!」
「ど、どうしたんだ!?」

 ソーニャは酷く慌てた様子で手に持っていた手紙をアルに押し付けた。

「ナ、ナインチェが帰ってきたのよ!! そ、それで、この手紙を運んで来たの!!」

 アルは慌てて手紙を開いた。覗きこんで読んで見ると、そこにはこう書かれていた。

《ヴォルデモートは【グラストンベリー・トー】に居る。ユーリィもそこに居る。万全を期して来い》

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