幕間「始まりと終わりの物語」 パートfinal

「一つ。私にはどうしても気になる事があった」

 遠坂凛が丘を登り切った先で少年は待ち受けていた。黒い髪、暗い肌色、琥珀色の瞳、幼げな顔立ち。嘗ての相棒の若かりし頃の姿とはかなり差異が見受けられる。
 けれど、『彼』は間違いなく『彼』だ。
 
「死の間際、父は自らを『空っぽ』だと言った。だが、そうなると奇妙な点があった」

 少年、言峰士郎は静かに語る。
 
「私は父に聖杯の欠片を埋め込まれた。そうする事で記憶や思想をリセットしようとしたらしい」
「……あの似非神父、本当に碌な事しないわね」
「まったくだな。どうやら、彼は私を自らの鏡像にしようと考えていたらしい」
「鏡像?」

 凛が首を傾げると、士郎は薄く微笑んだ。

「衛宮切嗣が育てた『私』は彼の遺志を受け継ぎ、正義の味方となった。ならば、同じ条件で育てれば、『私』に自らの悪性を受け継がせる事が出来ると考えたらしい」
「何の為に?」
「彼は悩んでいたのだよ。自らの悪性について」
「悩んでいた……?」

 それは凛にとって衝撃的な事実だった。自らの愉悦の為に凛の父親である遠坂時臣を惨殺し、相方であったアサシンのサーヴァントを使い潰し、平凡に生きる筈だった士郎の人生を歪めた男。
 彼が悩んでいたなどという話、到底信じる事は出来ない。そんな凛の思いを察してか、士郎は肩を竦めた。
 
「悩んでいたのだよ。だから、彼は聖堂教会に身を置きながら、聖杯から聖痕を授かった」
「どういう事?」
「この街には他にも魔術師が居た。にも関わらず、彼は聖杯戦争が始まるよりも随分と早く、令呪を授かっていたらしい。その理由は彼の祈りの切実さにあったのだ。彼は自らの悪性を識るより前から自らの異常性には気付いていた」
「つまり?」

 勿体振った言い回しに、凛は苛立ちを覚えながら先を促した。
 
「人が美しいと思うべきものを愛でる事が出来ず、人が疎むべきものに執着してしまう自らの異常性に彼は幼い頃から苦しんでいた。彼が恐ろしい悪性を抱きながら、同時に誰もが認める敬謙なキリスト教徒であった理由もそこにある。彼は神に祈っていたのだよ。自らの悪性から解放される事を――――」
「……綺礼」

 今は亡き兄弟子の苦悩を凛は初めて知り、眉間に皺を寄せた。
 もし、彼の悩みに気付いてあげる事が出来ていたら、きっと、彼の運命だけでなく、士郎の運命や凛自身の運命も大きく変わっていたに違いない。
 彼が自らの悪性を受け入れる事無く、別の道を歩ませる事が出来たかもしれない。もしかしたら、凛は『間桐桜』では無く、『遠坂凛』を今も名乗る事が出来ていたかもしれない。傍らには父と綺礼の姿があり、一流の魔術師として聖杯戦争に参加していたかもしれない。
 
「彼は自らの悪性を識った後も答えを求め続けていた」
「答え?」
「何故、このような怪物が慈悲深き僧侶であった父から生まれてしまったのか? 自らの悪性はどこから湧き出すのか? 自らの悪性、その本質は何なのか? 彼は常に疑問を抱いていた。そして、答えを指し示す導き手を欲していたのだよ」
「そして、彼は選んだのね……」
「そう。彼は私を自らの導き手として選んだ。自らの鏡像として私を育て、私を観察する事で自らの悪性の本質を探ろうとした。その結果が……」
「『空っぽ』って訳ね」
「彼の表情は絶望に彩られていたよ。彼を長年苦しませていた自身の悪性、その正体が単なる『無』であった事に……」
「けど、あなたは綺礼の出した結論に疑念を抱いた。そうね?」

 士郎は称賛の眼差しを凛に向けた。
 
「その通り。確かに、私は感情の起伏が乏しく、将来の夢なども持ち合わせていない。けれど、私が彼を観察した限り、彼が『空っぽ』だったとは到底思えなかった。彼が持つ悪性は異端ではあったが、『空っぽ』という言葉とは掛け離れたものだった」
「それで、あなたはどうしたの?」
「疑問の答えを求めた。彼の死に胸を悼める事も出来ぬ親不孝者だが、私はこれでも神の信奉者なのでね。父の死の間際の苦悩を取り払ってやらねばと思った次第だ」

 そこに感情は無い。彼はただ、教会の信徒だからという理由で動いているだけだ。その在り方はまるで与えられた命令を実行するだけの機械のようで薄気味が悪かった。
 
「聖杯戦争の監督役に任じられ、便利そうだからと、サーヴァントを召喚したのだが、現れたキャスターは私の疑問の答えを共に探ろうと提案してくれた。だから、私は全てを彼に委ねる事にした。何分、私は魔術に疎くてね。父が教えようとしてくれた事もあったのだが、彼は指導者としては聊か……」

 言葉を濁す彼に凛は曖昧に微笑んだ。
 
「確かに、綺礼が誰かにものを教える姿って想像が出来ないわ」

 凛の言葉に士郎も微笑む。
 
「まあ、キャスターがいきなり、私を大聖杯と一体化させようとした事には驚いたがね」
「……はい?」
「いや、あそこまで驚いたのは後にも先にも無かったよ。キャスター曰く、私の肉体は聖杯の欠片によって変容しているらしいのだ」
「変容って?」
「詳しくは分からない。キャスターが言うには聖杯の欠片を取り込んだ事で私の起源が変異した為に肉体がそれに合うよう変容したとの事らしい」
「起源が変異って?}
「どうも、私の起源は『聖杯』らしい。イリヤスフィールと同じだよ。ただ、彼女と違って、私の肉体は所詮、人間。起源の変異とそれに伴う肉体の変容によって、精神が異常をきたしたらしいのだ。起源に引き摺られ、他者の願望を叶える以外の思考が出来なくなってしまったのだ」
「それって……」
「いや、同情には及ばんぞ? 私は何も感じない。悪意も善意も苦痛も愉悦も全て等しく無だ。ただ、誰かが私に祈るなら、それを叶える。それだけだ」

 凛は言葉を失った。自らを不幸だと呪った事がある。イリヤの境遇を不幸だと嘆いた事がある。けれど、彼の境遇は彼女達の比では無かった。
 彼は人間性を奪われたのだ。ただ、一人の人間の疑問を解き明かす為の道具として、人生を歪められ、精神と肉体を作り変えられた。その状況に苦しむ事も出来ないなど、あまりにも残酷だ。
 
「まあ、このキャスターの推測は大聖杯と一体化した時に事実だと証明されたよ」

 士郎は微笑む。
 
「|この世全ての悪《アンリ・マユ》の悪性を起源としていれば、父も絶望に塗れて死ぬ事は無かったのだろうが……。大聖杯と接続した後も私はアンリ・マユと一体化はしなかった。ただ、彼の声を聞き、力の一部を借り受ける事が出来るようになっただけだったよ」
「アンリ・マユの声ですって……?」

 凛の問いに士郎は頷いた。
 
「正直、私としては答えを得られた事で満足だった。それで、父の絶望を晴らす事は出来たからね。彼の祈りは完遂した。けれど、アンリ・マユは私に聖杯を取れと願った。彼は生まれたがっているのだよ。だから、私は叶える事にした」
「叶える事にしたって……」

 凛は目を見開いた。そう言えば、嘗ての相棒の夢を見た時、彼の声はこんなにも高くは無かった気がする。それに、こんなにも幼げな顔立ちでは無かった気がする。
 
「ねえ、あなたって、男性よね?」
「ああ、少し前まではそうだったよ」

 少し前までは、その言葉に凛は後ずさった。
 
「あ、あなた、まさか……」
「いや、別にそういう性癖があるとかじゃないぞ。ただ、子を宿すには男の身では難しいのでな」
「そ、そういう問題じゃ無いでしょ!?」
「いや、そういう問題だよ。言っただろう? 私には何も無いのだ。男女の区別も無い。ただ、祈りを叶える為だけに存在しているのだからね。そして、私は彼の祈りを聞き入れた。その為に私は全身全霊を尽くす。さっきも言ったが、私の起源は『聖杯』だ。そして、私の魔術回路はある一つの魔術に特化したものなのだよ」

 凛はハッとした表情で呟いた。
 
「固有結界……」
「大正解。衛宮士郎が固有結界『|無限の剣製《アンリミテッド・ブレイド・ワークス》』を使えたように、私も使えるのだよ。ただ、彼のように戦闘に特化した代物では無いがね」
「一体……」
「私の固有結界『|祈りの杯《サング・リアル》』は祈りを叶える事に特化したものだ。請われた願いを聞き入れた時、その為に必要な奇跡を起こす。この場合、私の肉体を男性から女性へと作り変え、アンリ・マユの母胎とする事」
「あ、あなた……」

 開いた口が塞がらない。彼、いや、彼女の在り方はあまりにも異常だった。衛宮士郎も歪んだ思想の持ち主だったけれど、言峰士郎の思想の歪み具合は彼の比では無い。
 赤の他人の祈りを叶える為に自らの性別を変えるなど、狂人の発想だ。恐らく、アンリ・マユが祈らずとも、見知らぬ誰かが彼に従順な恋人や奴隷を求めたら、士郎はその為に自らを作り変え、その者に奉仕しただろう。
 それが願望機たる聖杯を起源とした言峰士郎の存在理由だから。
 
「ただ、君の考えも理解は出来る。アンリ・マユが世に出れば、世界を未曾有の災害が襲うだろう。それを止めたいのだろう?」

 心境をズバリ言い当てられた凛は小さく頷いた。
 
「だが、私としてもアンリ・マユの祈りを叶える為に尽くさねばならない。故、止めたければ私を殺すといい。彼の為に抵抗はするが、アーチャーならば問題無く処理出来るだろう」

 淡々と語る士郎に凛は恐怖した。彼の物言いには自らの命を惜しむ気持ちが一欠けらも無い。
 彼は人間では無い。聖杯が人の身を象り、一定のコミュニケーション能力を持っただけの存在だ。きっと、イリヤが聖杯として完成したら、彼のようになってしまうのだろう。

「それで、あなたはいいの?」
「アンリ・マユを産み落としてやれなくなるのは辛いよ。彼の祈りを叶えられないという事だからね。だが、まあ、仕方が無い」
「自分の命は? 惜しくないの?」
「惜しくないよ。そもそも、私は私自身に何一つ価値を見出していない。言っただろう? 私にとって、他者の祈りが唯一価値あるものなのだよ。だから、私にとって、君の祈りは実に価値あるものだ。故、君に殺されるなら、私としては……うん、幸福と言えるね」

 言葉が出ない。自らの破滅すら意に介さぬ異常者に対して、向ける言葉を凛は持っていない。
 助けを求めるように傍らに立つアーチャーを見ると、彼は冷めた表情を浮かべていた。
 
「貴様は実につまらないな。人とは未来を想像し、創造するもの。故に、一人一人に価値がある。だが、貴様は未来に何も思わない、何も創らない。確かに貴様の言う通りだ。貴様に生きる価値は無い」

 冷たくそう言い放つ彼に士郎は嬉しそうな笑みを浮かべた。
 
「私をそこまで理解してくれる人が居るとは意外だったよ。うん、君と出会えた事は他者の祈り関係無く、嬉しいよ」
「……え?」
「さあ、私を殺してくれ、アーチャー。それで、全てが終わるよ」

 今は女性だからだろうか、士郎の浮かべる微笑がまるで慈母のように見えた。
 それが酷く違和感のある光景だった。彼が何も感じないと言うなら、何故、彼はアーチャーに理解された事を喜んでいるのだろうか、その答えは……。
 
「待って!」

 アーチャーが双剣を振り上げる刹那、凛は叫んだ。
 
「あなた、嘘吐いてる!」
「嘘?」
「感情が無いなんて、嘘よ! あなた、さっき、言ってたじゃない! 感情の起伏が|乏しい《・・・》って! そうよ、あなたは感情を持っていないんじゃない、乏しいだけ! なら、あなたにも望みがある筈よ!」
「困ったな。君は私の命を惜しんでいるのかね?」

 士郎が尋ねると、凛は頭を悩ませた。
 
「惜しんでいる……っていうより、納得がいかない。だって、あなたは根っからの悪人ってわけじゃないし……。もし、本当は生きたい癖に、他人の祈りに振り回されて、死を選ぼうとしているなら……」
「しまったな。君は魔術師としては優し過ぎるよ。君が私の行動に疑問を抱いているようだったから、その答えを教えようと思って語ったのだが……」
「答えなさいよ! あなたの祈りは何?」

 士郎は頬を掻きながら曖昧に微笑んだ。
 
「いや、これを私の祈りと言っていいのか分からないのだが……」
「言いなさいよ!」

 詰め寄る凛に士郎はたじろぎながら恥じ入るような口調で呟いた。
 
「全世界の人々の祈りを叶えたいのだ」
「……は?」

 あまりにも壮大な祈りに凛は目を丸くした。
 アーチャーすらも言葉を失い、口をポカンと開けている。
 
「予想通りの反応だな……。でも、叶えたいのだよ。善人も悪人も老人も幼子も男も女も全ての人類の祈りを叶えたいのだ」
「そ、それは……」
「不可能な事は重々承知しているよ。でも、奇跡を願う者が居るなら、叶えてあげたいのだよ。例え、それが善意によるものであろうと、悪意によるものであろうと、その人が叶えたいと願う祈りを聞いてあげたい。叶えてあげたい。それが私の願いだ」

 凛はうろたえた。士郎が口にする祈りはあまりにも壮大過ぎる。正義の味方になりたいという願いの方がまだ現実味がある。
 善人と悪人の願いを両方叶えるなど、矛盾がある。その矛盾がある限り、士郎の祈りは叶わない。それを知りながらも願う彼女の顔はとても優しく穏やかで、凛は圧倒された。
 
「いや、実にすまない。君を誤解していたよ。君はもっと魔術師らしい人間だと思い込んでいた。こんな役割を押し付けて、実に心苦しいよ。だが、すまないな、アンリ・マユの為に自害は出来ないんだよ。だから、君の手で終わらせて欲しい」
「ま、待ちなさいよ! だって、願いがあるんでしょ!? 壮大過ぎて、いまいちピンと来ないけど、願いがあるなら、生きたいと思いなさいよ!}
「いや、私が生きてると、アンリ・マユが生まれて世界が終わるしな……」
「だったら、アンリ・マユの祈りなんて……」
「それは駄目だよ。彼は他の誰よりも先に私に祈った。祈りに優先順位はつけられないから、順番くらいは守らないといかん」
「じゅ、順番って……」
「私とて、常識は弁えているよ。悪性の祈りを叶える事は世に害を為す結果にしかならない。けれど、私はそれでも叶えてしまう。だから、私はここで死んでおいた方が良いのだよ」

 そう言って、微笑む士郎に凛は後ずさる。
 
「だって、あなたは……」
「凛。私は善人でも悪人でも無い。単なる道具同然だ。ただ、祈りを叶える為の機械に過ぎない。その機能を停止させるだけだ。君が罪悪感を覚える必要は無い」
「き、機能って、そんな事――――」
「優しい君に一つだけ教えてあげよう。道具は使い手次第で善にも悪にもなる。それを区別するのは人間の意志だ。それが私には欠落している。だから、悪にも手を貸す。この世全ての悪を孕む今の私は間違いなく悪人だ。だから、躊躇う必要は無いよ」

 優しく諭すように語り掛ける士郎に凛は更に後ずさる。
 
「無理よ。だって、そんな……」
「君には守りたい人が居るんだろう? それは私では無い筈だ」

 その言葉と共に浮んだのはイリヤの顔だった。彼女が自らの帰りを待っている。
 
「……酷いわ。そんな事言うくらいなら、最初から悪の親玉を演じててよ」
「うん、反省しているよ。いや、まさか聖杯戦争の勝利者がここまで優しい人間とは思わなくてね。君には残酷な事をしてしまった。本当にすまないと思っている」
「謝らないでよ……。私はこれから、あなたを殺すのよ?」
「それが私の願いでもある。繰り返すが、君に罪は無い。むしろ、世界を救う救世主となるんだ。誇りなさい」
「……誇れるわけが無いわ。士郎、あなたとは別の出会い方をしたかった。そして、友達になりたかった……」
「ああ、嬉しいな。叶うなら、今度は君と……。いや、止めておこう」

 凛は涙を流した。相手が最低最悪の悪党だったら良かったのに。
 
「アーチャー。お願い……」
「承った。言峰士郎と言ったな?」
「うん」
「前言を撤回しよう。貴様をつまらぬと言ったが、あれは嘘だ。全人類の祈りを叶えたいなど、実に身の程知らずな願いだ。だが、そのような大望を真剣に抱く貴様は実に面白い。貴様の紡ぐ未来も見てみたかった」
「……ありがとう」

 双剣を振り上げるアーチャーに士郎はまるで恋する乙女のように頬を赤らめながら礼を言った。
 
「良い笑顔だ。では、さらばだ」

 アーチャーは剣を振り下ろした。士郎の首が切り落とされる姿を私は目を逸らさずに見続けた。そんな事でしか、罪を贖う方法が見つからなかったから。
 アーチャーは切り落とした首を恭しく抱え、私の下に戻って来た。
 
「抱えていろ。これから、最後の仕上げを行う」
「う、うん」

 士郎の首。手渡されたソレを私は震えながら抱き抱えた。切断面から溢れる血に立ち眩みを起こし掛けながら、必死に意識を保ち続ける。
 これから、最後の仕上げを行うのだ。聖杯を破壊するという、最後の仕上げを……。
 
「終わりにして、アーチャー。もう、二度と聖杯が悲劇を齎さないように徹底的に破壊し――――」
「凛」
 
 令呪に魔力を流し込み、アーチャーに最後の別れを告げようとした凛の耳に誰かの声が響いた。
 その一瞬が全てを分けた。凛の視線がアーチャーから入り口付近で手を上げる『少女』に移った瞬間、凛は何かに覆われた。
 
「凛!」

 アーチャーが双剣を振り上げ、凛を覆う泥を切り裂こうとするが、彼の胸に突如空洞が空いた。
 
「これは――――」

 アーチャーが抵抗する間も無く、穴は一気に膨れ上がり、アーチャーを呑み込んだ。虚空に浮ぶ穴に手を伸ばしながら、入り口から少女はゆうゆうと丘を登る。
 
「ごめんね、凛。でも、駄目なのよ。まだ、聖杯を破壊するわけにはいかない」

 イリヤは泥の塊に頭を下げる。
 
「でも、安心して頂戴。上手くいけば、私も貴女も全てを取り戻せる。そう、キャスターが教えてくれたの」

 瞳に暗い光を灯しながら、イリヤは恍惚の表情を浮かべて言った。
 
「さあ、始めましょう、キャスター。全ての悪夢を終わらせる為に! ヴァルプルギスの夜を!」

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